研究概要 |
1、膵癌における遺伝子異常と細胞周期との関連に関する検討: 膵癌ではいくつかの遺伝子異常が知られているが、これらと細胞周期との関連を検討した結果、p53の過剰発現がサイクリンAの過剰発現と相関することを明らかにした。また悪性度の低い粘液産生膵腫瘍ではp53、サイクリンAの過剰発現が認められなかった。これらの結果は有効な膵癌治療法を開発するうえで、新たな作用点を提示していると考えられる。 2、PPARγligand,troglitazonの膵癌細胞株に対する増殖抑制効果、分化誘導効果の検討: Troglitazonは膵癌細胞株に対して10^<-5>M濃度で70%以上の増殖抑制効果を認め、管腔構造やtight junctionの形成など形態的に分化誘導を認めた。増殖抑制はG1期での細胞周期の停止によるもので、G1期での細胞周期調節因子の動態を検討すると、CDKinhibitor、p21の蛋白、mRNAレベルの著明な上昇とRb蛋白の低リン酸化を認めた。従って、troglitazonの膵癌細胞株に対する増殖抑制効果、分化誘導効果にはp21の誘導が関与していると考えられる。 3、p21,p27遺伝子を有効に誘導する薬剤のスクリーニングシステムの確立: Troglitazonのp21の誘導機序を、膵癌細胞p21 promoter stable transfectantを用いて検討した結果、転写の有為な上昇を認めず、p21 mRNAの安定化が主要因と考えられ、p21 mRNAの転写を促進する薬剤のスクリーニングシステムの有効性についてはさらに検討が必要である。
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