我々の施設(浜松医科大学第1内科及びその関連病院である藤枝市立総合病院消化器科)において、過去2年6ヶ月の間に94例の胃癌を経験した。そのうち、血清抗体・迅速ウレアーゼ試験・尿素呼気試験・組織学的所見のいずれにおいてもHelicobacter pylori(以下 HP)が陰性の症例は、わずかに6.4%であった。HP陰性症例のの中で、濃厚な家族歴・Epstein-Barr virus in situ hybridization 陽性(すなわちEBV関連胃癌と考えられる症例)など他因子の関与を強く示唆するような例はみられなかった。上記全症例のうち、組織から充分にDNAが抽出可能な45症例について、遺伝子不安定性(microsatellite instability・loss of heterozygosity)・テロメラーゼ活性・p53点突然変異・c-erbB2遺伝子増幅その他の項目について検討を行ったが、HP陽性胃癌と陰性胃癌の間に明らかな統計学的差異は認められなかった。またEBV関連胃癌の症例についても、分子生物学的な明確な特徴は現在のところ得られていない。今後も症例数を増やし検討を続けて行きたいと考えている。
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