研究課題
10年度は、インターフェロン誘導蛋白のひとつである二本鎖RNA依存プロテインキナーゼ(PKR)の慢性肝炎患者肝組織中の発現量を検討した。治療上の必要から施行された肝生検により、本人の同意の元に得られ.た肝組織の一部からRNAを抽出し、PKR mRNA特異的プライマー及びTaqManプローブを用いてreverse transcriptionとpolymerase chain reactionを施行し、ABIPRISM7700シーケンスデイテクタにより、反応をリアルタイムに検出し、PKRmRNA量を定量した。検討した慢性C型肝炎15例、慢性B型肝炎6例の肝組織の、それぞれ5例と2例でPKR mRNAが検出された。PBC3例でも検討したが、PKR mRNAは検出されなかった。PKRmRNAと同様の方法で測定されたGAPDHmRNA量を内部標準とし、それとの比を計算することにより、PKR mRNAの発現量を補正し、症例間で比較したところ、原因疾患や疾患の進展度との関係はみられなかった。現在肝癌組織におけるPKR mRNAの発現の検討及び慢性肝炎肝組織におけるその他のインターフェロン誘導蛋白であるinterferon reguratory factor1 (IRF1)、p58、IRF2の測定を開始している。一方培養肝癌細胞株(SK-Hep-1)をインターフェロンで刺激することにより、PKR mRNA量が著明に増大することを確認し、現在その詳細な時間的変化を検討している。