HCVワクチンの開発には、中和抗体の誘導が不可欠である。最近、コンフォメイショナルエピトープをもった抗E2抗体には、交叉反応性があり強いウイルス中和作用のある可能性が示唆され、ワクチンエピトープの候補として注目されている。HCVの表面蛋白における抗原性の高い領域を三次構造の面からスクリーニングするため、HCV患者血清中抗E2抗体のコンフォメイショナルエピトープの特徴を検討した。方法は、HCV-H(ゲノタイプ1a)E2領域の種々の欠損または変異体をサイトメガロウイルスプロモーターのもとに発現するプラスミドを構築し、メラノーマ細胞にトランスフェクトした。2日後細胞を固定し、HCV(ゲノタイプ1b)患者血清を使って免疫蛍光染色し、血清中抗E2抗体の発現蛋白に対する抗体反応を測定した。その結果、患者血清18例中抗E2抗体陽性は12例(67%)であった。抗体陽性12例中10例においてaa406-aa644、2例においてaa406-aa643が、強い抗体反応を維持する最小の領域であることが同定された。これより、コンフォメイショナルエピトープがこの範囲であることが示唆された。 糖鎖付着可能部位への変異導入の検討では、aa448、aa556、aa623の変異が抗体の反応に影響を与えた。特にaa448の変異は、抗体反応性を完全に消失させ、この部位の糖鎖が、抗体のエピトープ形成に強く関与していることが示された。以上のように今回、ゲノタイプ1aと1bに交叉反応性のある抗E2抗体のコンフォメイショナルエピトープの特徴を明らかにした。この結果は次年度に予定しているC型肝炎DNAワクチンの設計に重要なデータである。
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