C型肝炎ウイルス(HCV)ワクチンの開発には、中和抗体の誘導が不可欠である。最近、コンフォメイショナルエピトープをもった抗E2抗体には、交叉反応性があり強いウイルス中和作用のある可能性が示唆され、ワクチンエピトープの候補として注目されている。前年度の検討により、HCVのシークエンスaa406-aa644が、強い抗体反応を維持する最小の領域であることが同定され、ゲノタイプ1aと1bに交叉反応性のある抗E2抗体のコンフォメイショナルエピトープの特徴が明らかになった。この結果を踏まえ、この領域を持ったHCV DNAワクチンをB型肝炎ウイルスにフィージョンさせた形で設計しマウスに投与した。この結果、(1)抗B型肝炎ウイルス抗体価は、市販の旧型ワクチンでは比較的早期に高値を示したが、その後すぐに低下した。一方、DNAワクチンでは抗体価が常に漸増し、高い持続性が期待された。(2)DNAワクチンは、ウイルス中和能のある抗HCV-E2抗体を持続的に誘導すると考えられた。また、誘導された抗体のサブクラスの検討からは、細胞性免疫も誘導することが示唆された。(3)このDNAワクチンは、B型、C型肝炎の両者のシークエンスを持ち、いずれの肝炎に対しても予防効果が期待できるため、臨床応用が期待される有効なワクチンであり、今後の実用化が強く期待される。
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