(目的)肝がんはアジア、アフリカ地域においてウイルス感染や肝発がん物質等が原因となって最も発生頻度の高いがんとなっている。肝がんにおけるp53やp16(INK4A)などのがん抑制遺伝子不活性化の報告はなされているが、肝がんで活性化されているオンコジーンについてはよくわかっていないのが現状である。 (結果)我々はcDNAサブトラクション法により、肝がんで過剰発現する遺伝子を単離し、その中に6個のアンキリンリピートからなる新規のがん遺伝子、ガンキリンを同定した(26Sプロテアソームのサブユニット、p28と同一の遺伝子であった)。(1)ヒト肝がん34症例すべてでガンキリンの発現は亢進していた。(2)マウスNIH/3T3細胞にガンキリンを過剰発現させたところ、ソフトアガー内で足場非依存性の増殖とヌードマウスでの造腫瘍性を示した。(3)ガンキリンはRBタンパクと複合体を形成し、RBタンパクのリン酸化とE2F-1活性の亢進を誘導した。(4)ガンキリンはRBタンパクの分解を促進した。 以上より、ガンキリンの過剰発現が肝発がんにおいて、RBタンパクの不安定化を介して寄与している可能性が示唆された。
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