研究課題/領域番号 |
10670469
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
消化器内科学
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
伊藤 裕章 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (40252639)
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研究分担者 |
中村 秀次 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (20237423)
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研究期間 (年度) |
1998 – 1999
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キーワード | クローン病 / IL-6 / IL-6レセプター / モノクローナル抗体 / Wasting Disease / 炎症性腸疾患 / CD45RB / Th1 |
研究概要 |
原因不明の炎症性腸疾患であるクローン病の新しい治療法を検討するため、抗IL-6レセプター抗体を用い、腸炎マウスの治療実験を行った。正常マウスからCD4^+CD45RB^<high>T細胞のみをソートし、同系のSCIDマウスに移入することにより腸炎が誘導される(wasting disease)。これに対し、移入直後から毎週抗IL-6レセプター抗体の投与を開始した。コントロールのラットIgGを投与したマウスは腸炎をおこし体重も減少したが、抗体を投与した群では組織学的にもほとんど正常で、成長にあわせて体重も増加した。そこで、抗IL-6レセプター抗体が腸炎を阻止するメカニズムを検討した。白血球のリクルートに関与する接着分子の発現を調べると、抗体治療群ではコントロールと比較して粘膜固有層マクロファージのICAM-1、血管内皮細胞のICAM-1、VCAM-1の発現が抑制されていた。腸炎発症マウスの腸管で強い発現の見られるIFN-γ、IL-1β、TNF-αなどのサイトカインの発現も抗体治療群では強く抑制されていた。また、粘膜上皮でのiNOSの発現も抗体投与により著しく低下していた。移入されたT細胞のSCIDマウス内での増殖も著名に抑えられていたため、TUNEL染色を用いてアポトーシスを検討すると、腸炎発症マウスでは腸粘膜にはアポトーシスが見られたが粘膜固有層のリンパ球にはあまり見られなかった。これとは逆に抗体治療群では粘膜のアポトーシスが少なくリンパ球のアポトーシスが増加していた。この結果は活性化T細胞のアポトーシスを促進することで抗IL-6レセプター抗体が炎症を終息に導いている可能性を示唆する。以上のごとく、IL-6のシグナルを抑制することは、多面的に治療効果をもたらし、クローン病治療の臨床応用に向けて大いに期待を抱かせる結果と言えよう。
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