研究概要 |
胃癌・大腸癌におけるアポト-シス耐性の原因となっているbcl-xLの過剰発現,bakの発現抑制の機序を明らかにするため、本年度は転写因子IRF-1とbcl-xL,bakのmRNA量の関連、ras/EGFR/Stat3系によるbcl-xLの発現調節につき検討した。 1. 転写因子IRF-1とbcl-xLのmRNA量の関連 内視鏡下生検により得られた大腸癌組織と周辺正常組織よりRNAを抽出し、競合的PCRでIRF-1とbcl-xL,bakのmRNAを定量した。周辺正常組織と比較して約半数の大腸癌組織において、IRF-1遺伝子の発現が低下しており、IRF-1とbcl-xLの遺伝子発現の間に負の相関、IRF-1とbakの遺伝子発現の間に正の相関が認められ、IRF-1がbcl-xL,bakの遺伝子発現を調節している可能性が示唆された。 2. ras/EGFR/Stat3系によるbcl-xLの発現調節 rasの遺伝子異常がEGF family growth factorのautocrine loopを介してBcl-xl発現を調節しているか活性化ras遺伝子を導入した腸粘膜上皮細胞を用い検討した。この細胞では転写因子Stat3の著明な恒常的活性化がみられ、Bcl-xLの増加、アポト-シス抵抗性が観察された。この細胞にdominant negative stat3導入による抑制実験を行いstat3の関与を調べたところ、dominant negative stat3導入によりbcl-xL mRNA量、蛋白量の減少と共にアポト-シス感受性が回復し、rasの遺伝子異常はStat3の著明な恒常的活性化、bcl-xLの誘導を介してアポト-シス耐性に働くことが明らかとなった。
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