研究概要 |
胃癌・大腸癌におけるアポトーシス耐性の原因となっているbcl-xL,bakの発現・機能異常の機序を明らかにするため、本年度はbak遺伝子異常の有無および転写因子IRF-1/IRF-2とbcl-xL/bak発現の関連につき検討した。 1.胃癌・大腸癌におけるbak遺伝子異常 内視鏡下生検もしくは手術により得られた胃癌・大腸癌組織よりDNAを抽出し、PCR-SSCP法によりbak遺伝子異常の有無をスクリーニングし、異常なバンドはシークエンスにて塩基配列を確認した。胃癌24例中3例、大腸癌20例中2例においてbakのミスセンス変異が認められた。胃癌24例中1例、大腸癌20例中2例においてbak遺伝子にアミノ酸変異を伴わないpolymorphismが認められた。一部の胃癌・大腸癌においてbak遺伝子の異常がアポトーシス耐性に関わっている可能性が示唆された。 2.転写因子IRF-1,IRF-2とbcl-xLおよびbakのmRNAの関連 内視鏡下生検により得られた胃癌・大腸癌組織よりRNAを抽出し、競合的PCRにてIRF-1,IRF-2,bcl-xL,bakのmRNAを定量した。IRF-1遺伝子の発現は大腸癌組織の約半数で低下しており、bcl-xL発現と負の、bak発現とは正の相関が認められた。IRF-1遺伝子の発現は胃癌組織で一定の傾向を示さず、bcl-xL,bak発現との相関も認めなかった。血球系の腫瘍細胞で報告されているIRF-1のスプライシング異常についても検討したが、胃癌・大腸癌では認めなかった。IRF-2遺伝子の発現は胃癌・大腸癌組織で一定の傾向を示さなかった。大腸癌ではIRF-1がbcl-xL,bakの遺伝子発現を調節している可能性が示唆されたが、胃癌ではIRF-1以外の因子がbcl-xL,bakの遺伝子発現を調節しているものと考えられた。
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