研究概要 |
胃癌・大腸癌におけるアポトーシス耐性の原因となるbcl-xL,bakの発現・機能異常の機序を解明するため、転写因子IRF-1/IRF-2とbcl-xL/bak発現の関連、ras/Star3系によるbcl-xLの発現調節、bak遺伝子異常の有無につき検討した。 1.IRF-1/IRF-2とbcl-xL/bakのmRNAの関連 競合的PCRで胃癌・大腸癌組織におけるIRF-1,IRF-2,bcl-xL,bakのmRNAを定量した。IRF-1遺伝子の発現は大腸癌組織の約半数で低下しており、bcl-xL発現と負の、bak発現とは正の相関が認められたが、胃癌組織で一定の傾向を示さず、bcl-xL,bak発現との相関も認めなかった。IRF-2遺伝子の発現は胃癌・大腸癌組織で一定の傾向を示さなかった。 2.ras/Star3系によるbcl-xLの発現調節 活性化ras遺伝子を導入した腸粘膜上皮細胞はアポトーシス耐性を示し、転写因子Star3の恒常的活性化とbcl-xLの発現亢進が認められた。dominant negative Star3の導入によりbcl-xLの発現は減弱し、アポトーシス感受性が回復した。 3.bak遺伝子異常の検索 PCR-SSCP法により胃癌・大腸癌組織におけるbak遺伝子異常の有無をスクリーニングし、異常なバンドはシークエンスにて塩基配列を確認した。胃癌24例中3例、大腸癌20例中2例においてbakのミスセンス変異が認められた。胃癌1例、大腸癌2例においてbak遺伝子にアミノ酸変異を伴わないpolymorphismが認められた。 胃癌・大腸癌ではIRF-1やeas/Star3系などの影響のもとにbcl-xL/bakの発現異常がおこり、あるいはbak遺伝子の変異による機能喪失により、アポトーシス耐性を獲得していると考えられた。
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