研究概要 |
レチノイドは種々の細胞の分化や増殖に密接に関与している。事実、白血病細胞の分化誘導作用より白血病の治療にも使用されている。最近レチノイドには肝癌細胞のアポトーシスを誘導することが報告されている(Biochem Biophys Res Commun 207,382-388,1995,Biochem Biophys Res Commun 219,100-104,1996)。また、ヒト肝臓癌の再発を抑制することが報告されている(N Engl J Med 334,1561-1567,1996)。さらに、レチノイドが肝再生や繊維化にも関連することが多くの実験的事実より明らかとなっている。私たちは肝臓におけるレチノイドの生物学的意義を明らかにする目的で、レチノイドレセプターのドミナントネガティブフォーム(RARE, J Biol Chem 269,19101-19107,1994)を肝細胞に発現するトランスジェニックマウス作成を試みている。RAREが肝細胞に発現した際、肝細胞特異的にレチノイドレセプターの機能が消失し、したがって肝臓でのレチノイドの機能を明らかにすることが可能となる。私たちはアルブミンプロモーターにRAREを接続し、さらにSV40イントロンポリーAを結合したトランスジーンを作成した。このトランスジーンをマウス受精卵に導入し、数匹のF0マウスを得ている。さらにF1マウスにトランスジーンが伝わり、肝臓特異的なRAREの発現を得ることができるかを現在検討している。本マウスを得ることができれば、肝発癌、肝再生、肝障害、肝繊維化など種々の肝病態でレチノイドの関与の検討が可能となる。
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