研究概要 |
癌退縮抗原遺伝子、MAGE-1と-3のmRNAを33例の肝細胞癌の切除標本で検討した。MAGE-1 mRNAは27例中21例(78%)に、MAGE-3は26例中11例(42%)に発現を認めた。両者の発現は肝細胞癌にのみ認められ、担癌非癌部組織では全く認められなかった。また、肝細胞癌のサイズ、組織分化度等とは相関せず、小さい、高分化型でもその発現が認めら、早期の肝細胞癌の診断に有用であることが示された。癌退縮抗原遺伝子産物のペプチドがCTLに認識されるためには、遺伝子翻訳がなされて蛋白として肝細胞癌内で産生される必要がある。そこで、MAGE-1と-3に対する特異的モノクロナール抗体を用いてImmunoblot法で検討すると、両者はそれぞれ80、60%に発現を認め、これらのHLA class-I拘束性ペプチドを用いたワクチン療法の可能性が示された。一方、ペプチドのHLAへの提示やCTLへのシグナル伝達物質関連分子の検討では、肝細胞癌はHLA class-I,hsp70やTAPは保持されているものの、B7-1の発現が弱く、ワクチン療法のためにはこれらの分子の発現に工夫を要するものと思われた。現在、ヒトPBMCより特異的抗体結合ビーズを用いたセレクションにより、効率的に樹状細胞を採取・培養することに成功し、MAGE-3蛋白ペプチドを用いたT2細胞のCytolysis assayを開始したところである。
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