1. カプサイシン感受性神経による胃内pHの感知と胃分泌機構のpHによる調節について ラットにプロトンポンプ阻害剤を投与して酸分泌を抑制し、胃内アルカリ化のモデルとし、胃内塩酸灌流を酸性化モデルとして実験を行った。表面麻酔剤であるリドカインで知覚神経をブロックするとアルカリ化によるガストリン分泌が阻止された。またcapsaicin前処置により知覚神経のうちのcapsaicin sensitive nerveをブロックするとアルカリ化によるガストリン分泌が約65%にまで抑制された。胃内pHを上昇させたラットの胃内に塩酸を投与するとpHの低下とともにガストリン分泌が抑制されるが、capsaicin前処置をしておくと胃内酸性化によるガストリン分泌の抑制の一部が阻止された。胃内のアルカリ、酸による刺激の少なくとも一部はcapaicin sensitive nerveを介してガストリン分泌細胞(G細胞)に伝達している。 胃内アルカリ化、酸性化ともに血中のNoxの上昇がみられ、capsaicin sensitive nerveからG細胞に至る経路にNOが関与していることが推測された。これについて次年度検討する。 2. 一酸化窒素の胃分泌への関与について 細菌のもつ菌体内毒素であるlipopolysaccharide(LPS)を作用させると胃粘膜内で一酸化窒素(NO)やサイトカインを産生する。LPSを少量(100μg/kg)投与することにより血中Noxの軽度の増加と胃酸分泌の抑制がみられた。この時胃粘膜ソマトスタチンの増加もみられるた。これらの反応はl-NAMEにより抑制されることから、LPSがNO介してソマトスタチンの増加をきたし、酸分泌を抑制している可能性が示唆された。
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