胃の炎症が胃酸分泌、ガストリン、ソマトスタチンなどの合成、分泌に影響していると考えられている。細菌感染による急性胃炎では胃酸分泌が抑制されるが、これにはlipopolysaccharide(LPS)か関与していると考えられる。LPSの作用の一部はNOによると考えられる。そこでラットにLPSを投与して酸分泌、ガストリン、ソマトスタチン分泌およびこれらの遺伝子発現を検討し、LPSによるNOの産生と酸分泌・消化管ホルモンの分泌と遺伝子発現に対するNOの影響を検討した。これまでの実験成績からLPSは通常使用される1/10ないし1/100の用量で胃分泌に影響がみられることを確認しているので、ごく少量のLPS(100μg/kg)をラットの腹腔内に投与し、酸分泌、血中NOX、胃体部のソマトスタチン含量、ソマトスタチンmRNA発現をnorthern blotにて、iNOS、TNFαの発現をRT-PCRにて測定した。 ラットに少量のLPSを投与すると血中のNOXに変化はみられなかったか胃酸分泌は抑制された。この用量のLPSで胃粘膜iNOS活性およびRT-PCRによるiNOSmRNA発現は増強したがL-NAMEによりこの変化は阻止された。胃前庭部ではLPSによりガストリンmRNA発現は抑制されソマトスタチンmRNAは増強された。粘膜内ソマトスタチン含量も増加した。これらの変化はL-NAMEにより阻害された。胃体部ではソマトスタチンmRNAは増強され、H+K+ ATPase mRNA発現は抑制された。これらはL-NAMEで阻止された。またLPSによりTNFαmRNAは発現増強し、L-NAMEで抑制された。これらのことから、LPSにより産生されたNOがソマトスタチン分泌促進を介して酸分泌を抑制していると推測されたが、NOがTNFαなどのサイトカインの発現を介する系の存在も示唆された。
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