研究概要 |
大腸癌の浸潤・転移に関する検討:大腸sm癌におけるKi-67,Cathepsin D,CD34の発現を検討した。Ki-67標識率はsm深部浸潤例,低分化度病変,脈管侵襲陽性例,リンパ節転移陽性例で有意に高値であった。Cathepsin Dは癌,間質組織の両者で発現し,特に後者における発現は癌の深達度,脈管侵襲,リンパ節転移と密接な関連を示した。CD34は,腫瘍径が大きいもの,sm深部浸潤したもの,低分化度病変,脈管侵襲陽性例,リンパ節転移陽性例で有意に発現率が高かった。以上,Ki-67,cathepsin D,CD34はいずれも大腸sm癌の浸潤・転移に関与示すことが明らかになった。潰瘍性大腸炎(UC)における大腸癌の発生,発育・進展に関する検討:UC合併大腸癌,dysplasia,非腫瘍部とUC非合併大腸癌,腺腫,正常粘膜におけるKi-67標識率,p53蛋白,MUC-1,pS2蛋白の発現を検討した。Ki-67標識率は,UC合併例では,非腫瘍部では炎症の程度が強い程,腫瘍部では異型度が高い程有意に高値であった。UC非合併例では,腫瘍の異型度が高い程高値であった。p53蛋白は,UC合併例では非腫瘍部では発現を認めず,dysplasiaの段階から発現を認めた。UC非合併例では正常粘膜,腺腫ではほとんど発現せず,癌で高率に発現を認めた。MUC-1はUC合併例ではdysplasia,早期癌に発現を認めず,進行癌のみに発現を認めた。UC合併例では正常粘膜,腺腫ではほとんど発現を認めず,早期癌から高率に発現を認めた。pS2蛋白発現は,UC合併例では,dysplasiaに比して癌で有意に高頻度であり,UC非合併例では,腺腫に比じて癌で有意に高頻度であった。以上,UC合併例はUC非合併例と比較して,p53蛋白はより癌発生の早期に,MUC-1は後期に関与している可能性が示唆された。
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