研究概要 |
大腸癌の浸潤・転移に関する検討:(1)進行大腸癌におけるKi-67,CD34,MUC1,E-cadherinの発現を検討した。治癒切除例においては,Ki-67標識率,CD34発現血管密度,MUC1の発現,E-cadherinの発現減弱はすべて生命予後と有意な関連を示した。臨床病理学的諸因子を含めた多変量解析の結果から,MUC1の発現,E-cadherinの発現減弱,リンパ節転移の3因子がこの順に有意な予後予測因子であった。また,これらの因子の組み合わせによる解析はさらに予後推定に有意であることが明らかになった。(2)次に,進行大腸癌におけるVEGF-CとCD34の発現を検討した。その結果,癌におけるVEGF-Cの発現は,CD34発現血管密度と有意な関係を示しながら生命予後と有意な関連を示すことが明らかになった。以上,接着分子,抗接着分子,血管新生と進行大腸癌の浸潤・転移の関係を明らかにした。 大腸sm癌のV型pit patternを呈する病理組織学的因子とMUC1及びCathepsinDの発現に関する検討:拡大内視鏡による大腸sm癌のpit pattern診断の病理組織学的構築とMUC1及びCathepsin Dの発現について解析した。V型pit patternをその程度により4段階に細分類したところsm浸潤度とV型の程度は有意な関連を認め臨床的に有用な分類であった。V型pit patternを規定する因子が,間質反応,癌の異型度,病変表層腺管開口部の乱れ・破壊であることを明らかにした。背景因子の解析では,MUC1の発現は間質反応,病変表層腺管開口部の乱れ・破壊の程度両方に関連していたが,Cathepsin Dの発現は間質反応とは関連がみられたものの病変表層腺管開口部の乱れ・破壊の程度とは関連がなかった。
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