平成10年度から平成12年度の科学研究補助金によりモルモット単離大腸輪走平滑筋細胞を用いて消化管運動の研究を行い以下の成績を得た。(1)thyrotropin releasing hormone(TRH)がatrial natriuretic peptide(ANP)とvasoactive intestinal peptide(VIP)の共通の受容体(VIP-specific receptor)に結合し、nitric oxide(NO)-soluble guanylate cyclase系を介する細胞内情報伝達機構により平滑筋細胞を弛緩させること、(2)adrenomedullin(AM)とcalcitonin-gene related peptide(CGRP)は平滑筋細胞上にadenylate cyclaseとcouplingし弛緩作用を惹起させる各々独自の受容体を有するが、AMはCGRP受容体に又CGRPはAM受容体に比較的高い親和性で結合すること、(3)brain natriuretic peptide(BNP)はANPと共通のsoluble guanylate cyclaseを活性化させる受容体との結合以外に、adenylate cyclaseとcouplingしている独自の受容体を介して弛緩作用を惹起させること、(4)parathyroid hormone(PTH)は平滑筋細胞上に独自のPTH受容体を有し、adenylate cyclaseを介して弛緩作用を惹起させるが、PTH受容体からVIP-preferring受容体への抑制性のreceptor-receptor interaction及びVIP-specific受容体からPTH受容体への抑制性のreceptor-receptor interactionが存在すること、(5)大腸輪走平滑筋細胞上には既知のbradykinin(BK)-1、-2受容体は存在せず、未知のBK受容体を介してBKの収縮作用が惹起されること、等を明らかにした。
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