研究課題/領域番号 |
10670485
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中牟田 誠 九州大学, 医学部, 助手 (00294918)
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研究分担者 |
岩本 裕昭 九州大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (70274438)
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キーワード | 肝線維化 / 肝硬変症 / 伊東細胞 / スーパーフィブロネクチン / フィブロネクチン / 細胞外マトリックス / 細胞骨格 |
研究概要 |
スーパーフィブロネクチンはフィブロネクチンが高度に重合したもので、具体的にはフィブロネクチンのC末部分のtypeIIIリピートの一部をリコンビナントに作成したもので(III1-c)を仲介としてフィブロネクチンをin vitroにS-S結合により高度重合させたもので、細胞の遊走を抑制する人工細胞外マトリックスとして報告された。我々は既報に従い、RT-PCRにより肝伊東培養細胞よりIII1-cのcDNAを得て発現ベクターに挿入後大腸菌にて発現させ、そのリコンビナントCIII1-cをHis-Tag・Ni-NTA法により精製した。このCIII1-cを用いてフィブロネクチンと重合させスーパーフィブロネクチンを作製した。この作製期間中、CIII1-cフラグメントそのものも線維芽細胞の増殖、遊走能を抑制するとの報告があった為に、スーパーフィブロネクチンの実験と平行してCIII1-cフラグメント単体による実験もおこなった。まず、肝線維化において中心的役割を果たす伊東細胞の初代培養にIII1-cフラグメントまたはスーパーフィブロネクチンを添加し、細胞外マトリックス(I型コラーゲン等)産生、細胞遊走能、細胞増殖能を検討した。、現在のところ、III1-cフラグメント、スーパーフィブロネクチンともにこれらを抑制する結果を得ている。次に、細胞の形態変化を位走査顕微鏡、細胞内骨格(ストレスファイバー、α-smooth muscle actin等)の変化を検討中であり、これら細胞骨格蛋白の発現や重合も抑制している結果得ている。その作用機序としてインテグリンを介したFAK、Rho-ROCK、ERKの細胞内シグナル伝達系を抑制していると考えられ現在検討中である。本実験と平行してこれらの細胞内伝達系が肝伊東細胞の増殖・細胞外マトリックスの産生に重要な役割を果たしているか否かを検討するために、インテグリンの活性化を阻害するRGDペプチド、Rho dominant negative遺伝子、C3毒素やROCK阻害薬を用いて検討した。これらはいずれも伊東細胞の活性化を抑制し、FAK、Rho-ROCK、ERKの細胞内シグナル伝達系が伊東細胞の活性化に重要であることが判明した。今後はIII1-cフラグメントまたはスーパーフィブロネクチンを肝線維化モデルラットに投与し、in vivoでの抗線維化作用を検討していく予定である。
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