研究概要 |
1. 胃悪性リンパ腫のうち,MALTリンパ腫(low grade type)はH.Pylori除菌療法を行なうことにより,肉眼的・組織学的所見が改善するとされているが,なかには除菌療法に無反応で悪化する症例もある.我々は,MALTリンパ腫に対する治療前の効果の予測についての評価が行なえないかどうかを検討する目的で,平成10年度より内視鏡的に採取した悪性リンパ腫検体についてH.Pylori除菌前後でのCGHを用いた遺伝子発現異常の検索を開始している.現在までにH.Pylori除菌を施行することにより,肉眼的・組織学的所見が改善する症例と改善しない症例では除菌前の遺伝子レベルで相違があることが推測されている.この結果については,平成10年度 第56回日本消化器内視鏡学会総会にて発表し,現在も解析を続行している.今後は,除菌後に遺伝子異常が変化するかどうかについての検索も行ない,現在までの結果と合わせ,遺伝子診療に応用する予定である. 2. 大腸ポリープについてはmultistep theoryにより,ポリープが大きくなるほど癌化の危険性が高くなるとされており,実際に大腸癌はポリープの一部として検出されることが多い.これより我々は,平成10年度よりポリペクトミー標本について,ポリープの大きさ,組織学的分類により,遺伝子異常に相違があるかどうかについての検索を行なっている.これにより,将来ポリープが癌化するかどうかが診断可能になると思われる. 3. B型肝炎による肝細胞癌のCGHによる検討は既にCANCER RESEARCHに発表されているが,我々はC型肝炎による肝細胞癌についても平成10年度より検索を開始している. 4. 我々が現在までに行なってきた胃癌のCGHによる検索に加え,萎縮性胃炎,慢性胃炎,H.Pylori感染胃粘膜などの胃の前癌病変と考えられている病変についても平成10年度より内視鏡的に採取した検体に対して解析を開始している.
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