膵腺房細胞アポトーシスにおけるステロイドの関与について明らかにするための基礎実験として、マウス膵腺房細胞へSV40large T antigenを導入することにより作成された培養細胞株で、アミラーゼの分泌能を保持した266-6細胞を用い検討した。実験方法としては266-6細胞を1×10^5/mlの濃度でplatingした後、RU486を1μM、10μM、100μM添加し、細胞数の変化をcell counterで24時間まで経時的に測定した。一方、RU486を1μM、10μM、25μM、50μM添加した際のアポトーシスの発現を、propidium iodide(PI)染色を用い、9、14、18時間後フローサイトメトリー(FACS法)で検出した。RU486添加後24時間後、1μMおよび10μM添加群では有意な変化は認められなかったが、100μM添加した群においてコントロール群に比し細胞数は40%以下と有意な減少を示した。一方FACS方による検討では、RU486を50μM添加した群において、9時間後からアポトーシス細胞の有意な増加を認めた。In vitroマウス膵腺房由来培養細胞株である266-6細胞を用いた実験系において、グルココルチコイド受容体拮抗薬RU486はアポトーシスを介した細胞数の減少をきたすことが判明した。このことから、膵腺房細胞の形態保持には内因性グルココルチコイドが生理的に重要な役割を持っていることが示唆された。今後は、マウス膵菅結紮モデルでのRU486もしくはメチルプレドニゾロン投与の検討をし、in vivoでの膵腺房細胞アポトーシスにおけるステロイドの関与について、さらなる評価が必要である。
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