研究課題/領域番号 |
10670498
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
島田 忠人 獨協医科大学, 医学部, 助教授 (10206170)
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研究分担者 |
大塚 幸夫 獨協医科大学, 医学部, 助手 (40296140)
寺野 彰 獨協医科大学, 医学部, 教授 (50155470)
平石 秀幸 獨協医科大学, 医学部, 助教授 (00199035)
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キーワード | ヘヒコバクリー・ピロリ / 胃粘膜 / 癌化 / 炎症 / 活性酸素 |
研究概要 |
Helicobacter pylori(H.pylori)は、ヒト胃粘膜に慢性感染を起こしていろグラム陰性桿菌である。現在、H.pylori感染は、慢性胃炎、消化性潰瘍、胃癌、胃MALTリンパ腫など、主要な胃・十二指腸疾患の病因と考えられている。しかしながら、H.pylori感染時の胃粘膜傷害機序、胃粘膜上皮細胞の癌化の機序などの詳細については不明の部分も多い。今回の研究では、H.pylori菌株で発現している病原遺伝子の多様性と臨床病態との関連を検討するとともに、H.pylori感染にともなう胃粘膜の炎症が、胃粘膜上皮細胞の機能、遺伝子発現パターンなどに与える影響を検討した。胃粘膜の炎症に関連する因子のうち、とくに活性酸素代謝産物の産生増大が、粘膜傷害や癌化との関連から重要であると思われたので、培養胃粘膜細胞に酸化ストレスを与えた場合の遺伝子発現パターンの変化について検討した。その結果、酸化ストレスにより転写因子NF-κB、AP-1などが活性化されることが認められ、IL-8などのサイトカイン遺伝子やCOX-2遺伝子などの発現が著明に増大した。また、細胞周期調節、アポトーシスに関連したいくつかの遺伝子や、MAPキナーゼ系の遺伝子などの発現レベルが影響を受けていた。これらの所見により、炎症反応が持続しているH.pylori感染胃粘膜では、明らかな形態学的な細胞障害が生じていない場合でも、胃粘膜細胞内の情報伝達系、遺伝子発現パターンが変調を来していることが予想され、胃粘膜細胞の老化、癌化との関連が示唆された。
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