ウイルス性慢性肝障害に対するI型インターフェロン(IFN)治療の過程でIFNの癌細胞に対する作用機序を検討することが重要な課題と考えられた。そこで、癌細胞増殖抑制効果を指標にしてINFの肝癌細胞に対する作用を検討した。その結果、IFNにより増殖が強く抑制される細胞とあまり抑制されない細胞が認められた。この抑制効果の高い(高感受性)細胞と、低感受性細胞を用いて、シグナル伝達物質interferon regulatory factor(IRF)-1の遺伝子変化と発現量の違いをみた。高感受性細胞ではIRF-1 mRNAの発現が高く、低感受性では発現量が少なかった。そこで、IRF-1遺伝子変化の有無を検討したところ、IRF-1 genomeにrearrangementをきたす違いが考えられるため、Bam HI siteの違いをintron部に追究した。その結果intron8の部位に低感受性株にのみ認められるBam HI siteを見出した。健常人末梢血DNAの検討から、この変異は個体に見られるsingle nucleotide polymorphysm(SNPs)であると思われた。しかしこの変異のみでは発現量の違いを説明できないため、さらにプロモーター部分を増幅し、クローニング後sequenceを行った。その結果データベース上の-500bpまでの位置に4点のSNPsを見いだした。このSNPsを含む約500bpのプロモーター部位をベクターに組み込み、高感受性株、低感受性株それぞれに導入して、ルシフェラーゼアッセイを行ったところ、プロモーター活性に有意な差が認められた。すなわち、インターフェロンに対する薬剤感受性を規定するSNPsであることが考えられた。
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