研究概要 |
1. ヒト肝疾患の障害度及び進展とepimorphin発現の相関を調べるため、ヒト手術検体より得られた肝組織片を用い、伊東細胞の活性化マーカーであるα-smActinとepimorphinタンパクの免疫染色を行った。またepimorphinについてはmRNAの発現量も同時に調べた。肝硬変の進展に関しては血中トランスアミナーゼの測定及び病理組織による線維化度を観察した。その結果、epimorphin蛋白は、正常肝においては小葉内の肝類洞伊東細胞に観察されるが、硬変肝においては小菓内以外にも再生結節の線維部にepimorphin蛋白の集積が見られた。mRNA発現量については、線維化との相関はなかったが、トランスアミナーゼの高い症例では発現量も高かった。この結果から、ヒトにおいては肝炎ウィルス感染などによる炎症の繰り返しにより、活性化された伊東細胞からepimorphinの産生が亢進し、さらに同時に作られるcollagenなどの細胞外マトリクス中にそのepimoephinが蓄積されて行くため、線維上に強く観察されるものと推測された。 2. 次にepimorphinの産生誘導物質を調べるため、培養ヒト伊東細胞LI90に各伊東細胞活性化因子を添加し、epimorphin mRNAの発現量の変化を観察した。その結果bFGFでは発現の亢進が見られなかったが、TGF-β添加では早期からepimorphin mRNAの発現が亢進した。又PDGFbb添加では6時間では変化が見られず、24時間で亢進した。このことから肝炎症時には炎症細胞等から産生されるTGF-β,或いはPDGFbbの刺激により伊東細胞自身から産生されるTGF-βにより、epimorphinの産生が亢進するものと推測された。 本年度の研究により、炎症性肝疾患の際に肝上皮細胞の分化誘導因子であるepimorphinの産生がTGF-βにより亢進されることがわかったが、今後は障害の修復、機能回復との関係について追求する予定である。
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