国内外の研究成果を通覧する時、消化管各部位、各組織層の違いによるICCの細胞学的異同を、種差も含め体系的に展望できる状況には至っていないところから、本年度の研究では、著者本人の従来の研究成果を補完し、消化管に分布するICCの細胞学的特性を総括、整理できるよう微細構造学的検索を行った。 ラットおよびモルモットでは、胃、小腸、結腸を通して、筋層間神経叢部には微細構造上、線維芽細胞に類似したICC-APが認められるが、小腸深部筋神経叢部のICC-DMP結腸筋層下神経叢部のICC-SMPには豊富なカヴェオラや明瞭な基底膜が観察され、平滑筋に似た特徴が見られる。また、胃および結腸輪走筋層内に位置するICC-CMでは、連続した基底膜は欠くもののカヴェオラは観察されるなど、両者の中間的な特徴が見られ、同一動物種においても器官、組織層によって、ICCは異型性を示すことが明らかになった。以上の観察をもとに、各器官、各組織層に見られるICCは、その微細構造上の特徴から、Type1(least muscle-like ICC)、Type2(intermediate type ICC)、Type3(most muscle-like ICC)の三型に分類された。ところで、ICC-DMP、ICC-SMPは勿論、胃および結腸のICC-CMにおいても、平滑筋と多数のgap junctionを形成する一方、シナップス小胞を多量に含む軸索終末と密接することから、これらのICCでは神経一筋間に介在し、神経信号のmediatorとして働くことが推定された。
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