I)移植後や虚血再灌流後(I/R)肝障害では好中球とそのケモカインが重要である。 移植後の急性肝障害には、拒絶やI/R障害などが関与する。ラットを用いた実験で、移植後の肝障害やI/R障害に好中球とそのケモカイン(CINC)が関与することが判明した。また、活性化好中球は、接着分子発現の誘導を介して、急性の炎症性障害を加速化する可能性も示された。 II)アルコール(ア)性脂肪肝では、好中球ケモカイン産生能が亢進している。 アルコール投与ラットにエンドトキシンを投与すると急性肝壊死が惹起される。ア投与群では、肝のCINCレベルは対照群に比して有意に高く、また、好中球浸潤や肝壊死も高度であった。従来の我々の成績も合わせると、『エンドトキシンー活性化肝マクロファージーケモカインー好中球』カスケードが、ア性肝障害進展初期の反応で中心的役割を担うことが推測された。 III)脂肪肝の虚血再灌流障害にアポトーシスと炎症性サイトカインが関与する。 ア性脂肪肝では、対照群や非ア性脂肪肝に比して、虚血再灌流後1時間で、NFkBのDNA結合能が有意に高くなることが明らかとなった。4時間後には、好中球の肝浸潤と肝壊死は高度で、好中球ケモカイン(CINC)産生が高いことが確認された。また、4時間後の肝アポトーシスは、非ア性脂肪肝でも同様に高いことが明らかとなった。以上、アルコール性脂肪肝では、好中球活性化が準備されており、その際、アポトーシスが肝壊死を誘導することが推定された。 IV)クッパー細胞機能抑制は脂肪肝の虚血再灌流肝障害を制禦する。 クッパー細胞機能抑制を行うと、アルコール性脂肪肝では虚血再灌流後にNFkB結合能、サイトカインレべル、アポトーシス、好中球浸潤と肝壊死のいずれもが有意に抑制された。
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