平成10年度には、lamivudine耐性B型肝炎ウイルスのpolymerase chain reaction(PCR)を利用した検出方法を開発した。その検出法は、PCRの反応を行う際に、YMDDの変異株が有する配列であるYIDDあるいはYVDDの配列のみに制限酵素認識部位が導入されるようにPCRのprimerをデザインし、PCRの反応後に制限酵素で切断し、そのパターンにより変異株を同定する方法である。さらに、変異株の検出の感度をあげるために、1stPCRにおいて、野生株のみに上記とは別の制限酵素認識部位が導入されるようにprimerをデザインし、1stPCR後にその制限酵素でproductを切断し、変異株のみが特異的の増幅されるように工夫した。この方法によって、変異株の検出率を10-1000倍高めることができた。また、HBV DNAが血中で増加する3-6ヶ月前にすでに変異株が増殖を開始していることを検出することができた。しかし、投与開始前の血清からは、変異株は1例も検出されなかった。この事実が、変異株がlamivudine投与中に点突然変異により生じる可能性を示唆するが、さらに検出感度を上げてみれば、投与前の血清からも検出される可能性もあり、さらに検討を要すると考えられた。現在20例のlamivudine投与例のうち、7例に変異株が検出されており、lamivudine単独投与の治療では限界があることを示していると考えられた。
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