研究概要 |
110名のサルコイドーシス患者と161名の健常者を対象に、まずTNF-βのNcoI多型について検討した。NcoIの切断配列が存在する対立遺伝子TNFB^*1と、それが存在しないTNFB^*2の割合は、健常者、サルコイドーシス患者それぞれで0.37/0.63、および0.41/0.59で、2群間に有意差を認めなかった。従ってNcoI多型は、サルコイドーシス発症の危険因子とは認められなかった。同様にTNF-αのプロモーター領域の3つの多型(-308,-244,-238)についても検討した。白人と異なり日本人ではこれらの多型の頻度はきわめて小さく、特に-244の変異は1例も認められなかった。-308については対立塩基G/Aの頻度は健常者で0.99/0.01、サルコイドーシス患者で0.99/0.01で、両群間に有意差を認めなかった。また-238についてもG/A頻度は健常者で0.98/0.02、サルコイドーシス患者で0.96/0.04と有意差を認めなかった。 一方予後との関連について検討したところ、TNFB^*1を有するサルコイドーシス患者では、有意にその経過が遷延する例が多く、TNFB^*2/2に比較して、一定期間に寛解に至る確率は0.48(p<0.05)と見積もられた。全身的ステロイド剤を使用したことがない患者について解析すると、さらにTNFB^*1の影響が明らかとなり、遺伝子型TNFB^*1/1、TNFB^*1/2それぞれの患者群は、有意にTNFB^*2/2患者群より予後が遷延していた。以上より我々の知見は、サイトカイン遺伝子多型とサルコイドーシスの予後とが関連することをはじめて指摘する報告となった。
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