研究概要 |
110名サルコイドーシス患者と161名の健常者を対象に、TNF-αのプロモーター領域の3つの遺伝子多型と、TNF-β第1イントロンに存在するNcoI多型を同定した。解析は、多型頻度、遺伝子型頻度に関しては、χ2検定とロジスティック回帰分析を用い、予後の解析にはコックス比例ハザードモデルを用いて検定した。その結果いずれの多型頻度に関しても、患者と対照群との間に有意な差を認めず、これらの遺伝子多型は、発症のマーカーとは言えなかった。ところが、TNFβの多型とサルコイドーシスの臨床経過とは関連を認め、対立遺伝子TNFB^*1を有する患者では、そうではない患者に比して有意に予後が遷延していた(寛解確率0.48)。ステロイド未使用患者に限ると、さらに3つの遺伝子型(TNFB^*11,TNFB^*12,TNFB^*22)の差は明らかであった(寛解確率それぞれ0.33、0.46、1.00)。また60ヶ月以上経過を観察することができた患者に限定して解析しても同様な結果を得た。以上よりTNFB^*1はサルコイドーシスの予後マーカーとなることが示された。 次に末梢血リンパ球をin vitroで刺激し、そのサイトカイン産主を調べた。TNF-β遺伝子型、TNFB^*1/1、TNFB^*1/2、TNFB^*2/2それぞれのTNF-αは産生はPHA刺激では180(平均)±100(標準偏差)、206±126、268±223pg/ml、抗CD3抗体+抗CD28抗体刺激では、159±58、345±166、296±139pg/ml、TNF-β産生はPHA刺激では520(平均)±370(標準偏差)、325±145、298±100pg/ml、抗CD3抗体+抗CD28抗体で刺激では242±134、481±320、444±149pg/mlであった。いずれも遺伝子多型により有意差を認めなかった。しかし抗CD3抗体+抗CD28抗体刺激では、TNF-α、TNF-βともにTNFB^*1/1個体での産生低下傾向を認めた。
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