研究概要 |
特発性間質性肺炎は、進行性の肺胞隔壁炎症、肺線維芽細胞増生、細胞外マトリックス蛋白沈着等による肺実質リモデリングを主体とする病態であり、種々の化学物質が複雑に関与していると考えられる。近年、特発性間質性肺炎の生検組織の解析などにより、TNFα,IL-1β,IL-6,IL-8等のサイトカインが、肺線維化に関与している可能性が報告されている。しかし、サイトカイン以外のメディエーターと肺線維化の関連については、十分な検討がなされていない。本年度においては、ブレオマイシン投与マウスを用いて、in vivo系での実験を主に施行し、生理学的、生化学的、組織学的検討を行なった。 〈PAFR-TG、PAFR-KO、cPLA_2-KO及びコントロールマウスの作成〉 PAFR-Tgマウスを交配させ得られたマウスを、生後3週目にPCR法を用いてゲノム解析しPAFR-Tgマウスか否かを判別した。PAFR-Tgマウスのlitter mateで、PAF受容体遺伝子発現が正常であるものをコントロールとして実験に使用した。PAFR-KOマウス系、cPLA_2-KOマウス系についても、同様に交配・ゲノム解析を施行し、遺伝子ノックアウト群とコントロール(野生型)群に鑑別し、実験に用いた(N.Uozumi,K.Kume,T.Nagase,et al.Nature1997.)。 〈肺線維化におけるPAFR、cPALA_2遺伝子発現の関与〉 肺線維化モデルとして、ブレオマイシン肺臓炎モデルを作成した。マウス各群にブレオマイシンを静注投与し、4週間後に線維化を定量的に検討した。マッソン・トリクローム染色標本の組織学的評価、肺湿乾重量比、肺ハイドロキシプロリン量、気管支肺胞洗浄液(BALF)細胞分画、BALF蛋白濃度、BALF中脂質(PAF、トロンボキサン、ロイコトリエン)濃度を測定した。また、肺線維化の生理学的指標として、人工換気・開胸マウスの肺抵抗、及び肺エラスタンス(コンプライアンス)を算出した(T.Nagase,J.Appl.Physiol.,1997)。以上の測定項目を各群で比較検討し、PAF受容体遺伝子発現およびcPLA_2遺伝子発現とブレオマイシン肺障害の関係について評価・検討を加えつつある。
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