特発性間質性肺炎は、進行性の肺胞隔壁炎症、肺線維芽細胞増生、細胞外マトリックス蛋白沈着等による肺実質リモデリングを主体とする病態であり、種々の化学物質が複雑に関与していると考えられる。PAFおよびエイコサノイドは、その生理活性作用より、肺線維化メカニズムに寄与している可能性が推察されるが、未だに検証されていない。本研究では、発生工学的手法を応用し、脂質性メディエーターの肺線維化機序における重要性について検討を加えた。特に、PAF関連遺伝子の間質性肺炎発症における意義を明らかにした。 <PAFR-Tg、PAFR-KO及びコントロールマウスの作成> PAFR-Tgマウスを交配させ得られたマウスを、生後3週目にPCR法を用いてゲノム解析し、PAFR-Tgマウスか否かを判別した。PAFR-Tgマウスのlitter mateで、PAF受容体遺伝子発現が正常であるものをコントロールとして実験に使用した。PAFR-KOマウス系についても、同様に交配・ゲノム解析を施行し、遺伝子ノックアウト群とコントロール(野生型)群に鑑別し、実験に用いた。 <肺線維化におけるPAFR遺伝子発現の関与> 肺線維化モデルとして、ブレオマイシン肺臓炎モデルを作成した。マウス各群にブレオマイシンを気管内投与し、2週間後に腺維化を検討した。肺線維化の生理学的指標として、人工換気・開胸マウスの肺エラスタンス(コンプライアンス)を算出した。またマッソン・トリクローム染色標本の組織学的評価を施行した。以上の測定項目を各群で比較検討し、PAF受容体遺伝子発現とブレオマイシン肺障害の関係について評価・検討を加えた。その結果、PAF受容体遺伝子発現がブレオマイシン肺線維化機序および間質性肺炎発症メカニズムに関与する可能性が示唆された。
|