[概要]Goodpasture症候群は、肺と腎の両臓器に共通する抗基底膜抗体によるII型アレルギー反応によって引き起こされる肺胞出血と糸球体腎炎を特徴とする疾患である。近年、IgGにより引き起こされるII型とIII型アレルギー反応が、細胞表面のFcγレセプターを介して開始される事実が明らかになってきた。本研究では、Fcレセプターのシグナル伝達に必須であるγ-鎖を欠損したマウス(Fcレセプター γ-鎖遺伝子欠損マウス)を用いて、Goodpasture症候群発症におけるFcレセプターの役割を検討した。平成10年度においては、Goodpasture症候群のマウスモデル作成を目的として肺と腎の両臓器に共通する抗基底膜抗体作成を行った。この抗マウス糸球体基底膜抗体をマウスに投与し、免疫複合体による腎炎モデルの作成を試みた。平成11年度においては、この抗体を用いたFcレセプター γ-鎖遺伝子欠損マウスでの腎障害を評価するとともに、肺傷害モデルの作成とFcレセプター γ-鎖遺伝子欠損マウスでの肺障害の評価を試みた。 [結論](1)マウス肺・腎の基底膜に反応する抗基底膜抗体を作成した。 (2)この抗基底膜抗体により、効果的に免疫複合体性マウス糸球体腎炎を作成することが可能であった。 (3)抗基底膜抗体依存性組織障害におけるFcレセプターの役割について、Fcレセプターγ鎖遺伝子欠損マウスを用いて検討したところ、Fcレセプター欠損マウスでは免疫複合体性マウス糸球体腎炎は引き起こされなかった。 (4)抗基底膜抗体依存性肺障害においてもFcレセプター欠損マウスで引き起こされにくい傾向が認められた。 [まとめ]以上のことより、Fcレセプターの機能制御によりGoodpasture症候群の発症の制御の可能性が示された。
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