細菌の細胞膜構成物の一つであるlipopolysaccharide(LPS)はさまざまな病原因子となることがわかっている。K.pneumoniae Kasuya株から得られたLPSは細胞障害活性と強力なadjuvant活性を有する。まず、LPSをマウスにくり返し接種すること(くり返し細胞障害を起こさせること)で肺に亜急性の炎症性変化を引き起こすことがわかった。病理学的には、細気管支周囲から胞隔にかけてのリンパ球の浸潤である。間質に線維化はみられなかった。血中サイトカインの測定では、TNFαやIL-1aの関与の可能性は低いと考えられた。これらの病理変化はminocycline(抗生剤)を投与したマウスでは顕著でなく、病変の形成に抑制的に働いた。theophylline(LPS投与後のTNFαの上昇を抑制する)は病変形成を抑制しなかった。次に、LPSを強力なadjuvantとして用い同系マウスの肺抗原(肺組織のhomogenate)を週に一回または月に一回接種し感作することで、気管支から肺胞へ移行する部位にリンパ球が集蔟し閉塞性細気管支炎様病変を形成できた。この変化はcyclophophamideやG-CSFの投与においても同様にみられ、しかも、cyclophosphamide投与の方が強く感じられた。この本疾患モデルにおいて好中球の影響は少ないと思われた。この閉塞性細気管支病変は臓器移植後の肺病変や膠原病に伴う肺病変にみられる変化に類似していると考えられた。以上より、LPSにより誘導される病変は二つの異なる作用によって生じた肺病変であり、くり返し障害を受けることまたは自己免疫性機序による肺病変である。後者の病変は膠原病に伴って発症する肺病変や臓器移植後にみられる肺病変のモデルになり、発症機序の解析や治療方法の応用に利用できることが期待される。
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