研究概要 |
肺の線維化において認められる肺胞構築の破壊・改変には線維芽細胞が大きく関与していると考えられるが、本検討では構築の破壊・改変を伴う特発性肺線維症と肺胞構造の改変を伴わないNon-specific interstitial pneumonia (NSIP)および正常肺組織由来の肺線維芽細胞の収縮能を比較検討した。IPF:5症例,NSIP:5症例の開胸肺生検組識および限局性肺疾患患者(control)の正常肺組織部分のそれぞれから肺線維芽細胞株を樹立した。各線維芽細胞株の収縮能はコラーゲンゲルを用いた方法で検討した。IPF肺組織由来の線維芽細胞(IPF-F)はNSIPおよび正常肺組織由来の線維芽細胞株(それぞれNSIP-F,Control-F)と比べてコラーゲンゲル収縮能が亢進していた。また形態学的にはαsmooth muscle cell actinの増生が認められた。次に各線維芽細胞株の培養上清を検討するとIPF-Fの培養上清はNSIP-F・Control-Fの培養上清に比べて有意に線維芽細胞の収縮能を亢進させた。培養上清を分画すると約30kDa(PeakA)と約180kDa(PeakB)に細芽細胞の収縮能を亢進させる活性が認められ、TGFβおよびfibronectinであるという結果を得た。各線維芽細胞株の培養上清中のTGFβ・fibronectinを測定するとIPF-Fの培養上清中のTGFβとfibronectinは有意に高値であり、IPF-FがTGF-β・fibronectinを多く産生することにより線維芽細胞の収縮能を亢進させ、肺胞構築の破壊・改変に関与している可能性が示唆された。
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