我々は肺癌をはじめ乳癌、縦隔腫瘍などに対する放射線療法の副作用として生じる肺線維症の病態を明らかにする目的でラットを用いた放射線肺線維症のモデルを作製した。昨年度までの研究で血液プロテアーゼの一つであるトロンビンが放射線肺線維症における線維芽細胞の増殖と線維化に関与する可能性を示し、報告した。本年度は、さらに本モデルにおいてトロンビン以外の種々のプロテアーゼ発現を測定した結果、aminopeptidase属の一つであるCD13/aminopeptidase N発現が放射線肺臓炎の時期に増強していることを見出した。特に放射線照射による炎症および免疫担当細胞浸潤の著明な照射4週後にその発現は著明であった。最近我々はCD13/aminopeptidase NがTリンパ球に対する細胞遊走活性をもつことを見出した。そこで、放射線肺臓炎を発症したラット肺に高い発現がみられたCD13/aminopeptidase Nの本症におけるリンパ球浸潤への関与を検討した。放射線照射4週目のラットの気管支肺胞洗浄液中には高いCD13/aminopeptidase N活性とリンパ球遊走活性がみられた。さらに、CD13/aminopeptidase N阻害剤であるbestatinで洗浄液を処理することによって洗浄液中のリンパ球遊走活性が低下した。これらの成績は、CD13/aminopeptidase Nが放射線肺臓炎におけるリンパ球の病巣への遊走に関与していることを示し、CD13/aminopeptidase N阻害剤が放射線肺臓炎の治療に有用である可能性を示す。
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