研究概要 |
本研究の目的は肺癌患者を対象とし、担癌状態において血管新生の促進や抑制に関与する因子を解析し、その制御機構を特にTh2細胞由来サイト力インの面から明らかにすることであり、今回得られた成果は以下のように要約される。 1、癌性胸膜炎を対象とした癌局所におけるTh1/Th2バランス、血管新生促進因子、抑制因子の動態の解析。肺癌に合併した癌性胸膜炎において、Th2細胞由来サイトカインであるインターロイキン-10(IL-10)が存在し、マクロファージ機能などの細胞性免疫反応を抑制する可能性を示した。血管新生促進因子に関する検討ではvascular endothelial growth factor(VEGF)レベルが肺癌に合併した癌性胸膜炎において、良性浸出性胸水、漏出性胸水より有意に高いことを確認した。さらにVEGFは遠隔転移のある肺癌症例でより高値を示す傾向を認めた。 2、Th1/Th2バランスの偏位からみた肺癌治療法の検討。IL-15を用いた検討で、肺癌患者末梢血単核細胞(MNC)はIL-15刺激にて健常人のそれとほぼ同等のキラー活性を発現し、しかも遠隔転移を有さない例(StageI-IIIB)と遠隔転移の存在する例(StageIV)で末梢血MNCのIL-15誘導キラー活性に差はなかった。さらに、TIh2由来サイトカイン(IL-5,IL-10)の産生誘導能はIL-2よりIL-15が低く、Th1/Th2バランスの偏位におよぼす影響がより低いことから、臨床応用を考える上でIL-15はより有利である可能性を示した。。今後、肺癌患者に見られる血管新生促進因子と抑制因子の動態をTh1/Th2バランスとの関係を介してさらに詳細に解析する予定である。
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