AIDS患者から分離されたCandida albicans菌株に関して、アゾール系抗真菌薬をはじめ各種抗真菌薬の薬剤感受性試験をNCCLS法に基ずく薬剤感受性試験法によって測定した。その結果、本邦の分離菌株(東京大学医科研究所および横浜市立大学医学部から分与)の中にもアゾール系抗真菌薬に高度耐性を認める菌株を5%に検出された。さらにオーストリアのAIDS患者の口腔内カンジダ症から分離された高度耐性株を用いて、その薬剤耐性機構が非特異的な薬剤排出に起因し、その排出能を蛍光色素であるローダミン6Gを用いて定量化することが可能となり、高度耐性株では細胞外のローダミン6Gの量が感受性株に比べて極めて低いことが証明された。また、この排出機構はATP依存性の分子生物学的機構に依存し、その発現を調整している遺伝子がCDR遺伝子とCaMDR遺伝子と推定され、前述のローダミン6Gを用いた検出系はCDR遺伝子発現株に限って検出されることが証明された。また、ATP依存性の薬剤排出ポンプの作用を特異的に抑制するとされる薬剤を用いて、薬剤感受性および細胞内の薬剤の取り込み量が回復するかを検討した。その結果、ヒト癌細胞で薬剤排出ポンプを競合抑制するFK506(tacrolimus)を添加することによって、耐性菌株の薬剤感受性が回復するとともに、RI標識したアゾール系抗真菌薬の細胞内取り込みが増強することが確認された。今後、さらに他の薬剤を検討し、また動物感染実験による治療効果を確認し、アゾール耐性C.albicans感染症治療における有効な治療法を検討する。
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