上皮内T細胞(IEL)は粘膜免疫において重要な役割を果たし、中でも消化管上皮内T細胞(i-IEL)は、その発生起源、T細胞受容体、表面抗原をはじめ様々な点で末梢血T細胞と異なる性質を持つ独特なサブセットであることが知られている。ヒト気管支に存在する気管支上皮内T細胞の検討するため、機能的T、B細胞を欠くC.B-17 SCIDマウスに移植したヒト気管支xenograftにおけるT細胞の動態を検討した。 肺癌患者の摘出肺から得られたヒト気管支組織をSCIDマウス皮下に移植し、様々な期間(7-174日)を経た後に回収し、免疫組織染色にてCD3、CD4、CD8陽性細胞につき検討した。xenograftの粘膜固有層中のCD3陽性細胞は、移植後最初の1ヶ月で有意に減少し、5ヶ月以上を経過したxenograftではほとんど認められなかった。それに対しb-IEL数は、5ヶ月以上にわたり、移植を行わないものと比較し変化がなかった。正常ヒト気管支においては、CD4陽性のb-IELは、CD8陽性のものより有意に少なかった。しかし、xenograftにおけるCD4/8比の平均は正常のものより有意に高かった。b-IELの99.5%は、ab-TCRを発現しており、35.8%はIEL特異的なaeb7 integrinを発現していた。気管支上皮細胞には、i-IELの分化、増殖に関わっているといわれるIL-7、SCF、ICAM-1及びHLA-DRの発現が認められた。以上の結果から、このモデルにおいて、b-IELが長期生存しうる特異的サブセットであることが確認された。ヒト気管支上皮細胞は、IL-7、SCF、ICAM-1及びHLA-DRを発現しこれらのb-IELを維持している可能性が示唆された。 次に、このSCIDマウスに移植したヒト気管支xenograftのシステムを利用してアレルギー反応におけるリンパ球の動態を検討するために、気管支組織を移植したSCIDマウスにダニ抗原に対するIgE RAST高値の喘息患者および健常者の末梢血単核球の末梢血単核球を分離して腹腔し移植し、移植気管支へのリンパ球の移行性を検討した。その結果、喘息患者の末梢血単核球を移植した群は、気道へのCD3の移行性が健常者の末梢血単核球を移植した群と比較して有意に高いことが認められた。この事実は、喘息患者のTリンパ球が気道組織に親和性が高い機能を持つものとして重要と考えられる。
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