研究概要 |
急性肺炎,肺化膿症,膿胸症例における起炎微生物の検討を行い,口腔内常在菌のStreptococcus milleriが高率に分離され(急性肺炎・肺化膿症で13.3%,膿胸で40.0%),かつ口腔内常在嫌気性菌との混合感染が高頻度に認められることが明らかとなった。 昨年度の基礎的検討でS.milleriと嫌気性菌との間に相乗作用が認められ,その機序の一つとしてS.milleriが産生する短鎖脂肪酸が嫌気性菌の発育を促進し,かつヒト好中球の貧食・殺菌能を阻害することにより病原性に関与していることを明らかにした。今年度は,S.milleriのもつ莢膜とその主要構成成分である多糖体がヒト好中球の貧食・殺菌能を阻害し,それは濃度依存的であることを明らかにした。これらの種々の作用機序により,S.milleriは呼吸器感染症において病原性を惹起していることが示唆された。 臨床検査におけるS.milleriの分離同定法に若干の混乱が生じているが,それは分離培養に用いる血液寒天培地や同定キットに問題のあることを明らかにし,その対策案を検討した。
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