研究概要 |
クララ細胞蛋白(CC10)は、肺細気管支領域の無線毛上皮細胞から産生される蛋白質で、抗炎症作用、抗サイト力イン作用を有すると報告されている。我々はTh_1サイトカイン優位なサルコイドーシスとTh_2サイトカイン優位な喘息において、血中、局所のCC10の変動を検討し、臨床的意義、生物学的意義を明らかにすることを目的としている。平成10年度の成績は以下のとうりである。 1) 血中CC10値は喘息患者(n=63)で7.02±3.05ng/mlと有意に低下し(健常者 n-64 11.7±3.90ng/ml)、さらに罹病期間10年以上の群で有意に低下していた。(Shijubo N,Itou Y,Hirasawa M,et al.Serum levels of clara cell 10-kDa protein are decreased in patients with asthma. Lung in press.) 2) サルコイドーシス患者(n=31)において、血中CC10値は19.5±8.6ng/mlと健常対照に比して有意に高値であったが、BALF中のCC10値はサルコイドーシス患者と健常対照との間で有意差を認めなかった。 3) 喘息患者(微小肺癌切除例)におけるsmall airwayのCC10発現を免疫組織学的に検討した。喘息におけるCC10陽性細胞比率は11.4〜19.2%であり、肺機能正常群(25.8〜30.6%)に比較し有意に低下していた。またCC10陽性細胞とsmall airway周囲のT細胞および肥満細胞浸潤数と負の相関を認めた。(Shijubo N,Itou Y, Hirasawa M, et al. Clara cell protein-positeve epithelial cells were reduced in small airway of asthma.Am J Respir Crit Care Med in press.)喘息においてはsmall airwayにおけるCC10発現の低下が炎症細胞浸潤に関与していることが示唆された。
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