1)HDC遺伝死発現の細胞特異性に関する解析 ヒスチジン脱炭酸酵素(HDC)はL-ヒスチジンからのヒスタミン生成を触媒する酵素であり、肥満細胞や好塩基球など極めて限られた細胞でのみその発現が認められる。このHDC発現の分子機序を明らかにする目的で実験を行った。ヒト好塩基球性白血病細胞株:KU-812Fとヒト肥満細胞株HMC-1はHDCmRNAを発現しているが、K562やHelaではその発現がないことがノーザンブロットから示される。HDC遺伝子のプロモーターの構造を調べる目的でDNAaseIに対する感受性を調べると、HMC-1やKU-812-Fは分解を受けやすく、HeLaやK562は分解を受けなかった。このようなDNAaseに対する感受性はDNAに対するメチル化の差によることが報告されており、各種細胞のHDCプロモーター遺伝子のメチル化を調べるとHeLaやK562においては転写開始点付近のCpGはほとんどメチル化されているのに対してHMC-1やKU-812-Fではメチル化されておらず、この差がHDC遺伝子発現の差につながっていると結論された。 2)HDC遺伝子ノックアウトマウスにおけるアレルギー性炎症の解析 生体のアレルギー反応におけるヒスタミンの役割を明らかにする目的で、哺乳類では唯一のヒスタミン産生酵素:ヒスチジン脱炭酸酵素(L-histidine decarboxylase: HDC)の遺伝子ノックアウトマウスの製作を行い、完成した。このマウスは全身のヒスタミンを欠如し、ヒスタミン欠如モデルとして有用である。このHDC遺伝子ノックアウトマウスを用いてアレルギー反応を惹起して野生型のそれと比較した。 卵白アルブミンで感作したHCD遺伝子ノックアウトマウスにこの抗原を暴露して皮膚の血管漏出反応を調べた。血管外への漏出は血管内に注入した色素エバンスブルーの量を計算することにより推定した。結果は、HDC遺伝子ノックアウトマウスにおいては皮膚の即時型アレルギー反応の際、野生型には著明に見られる組織の浮腫即ち血管漏出反応がまったくみられなかった。またヒスタミンを外側から食餌性に補充したマウスにおいて、消失していた漏出反応が再現された。これらの事実より、即時型アレルギー反応における血管漏出反応は、ヒスタミンによるものである事が明らかになった。
|