研究概要 |
マクロライド系抗生物質の切除不能原発性肺癌患者(非小細胞肺癌)に対する長期投与による生存期間に及ぼす有用性については既に報告されているが、その効果はBiological Responce Modifierとしての作用と考えられており、悪性腫瘍細胞に対する直接効果に関しての報告は少ない。我々は、in vitroで悪性腫瘍に対する浸潤抑制効果の作用機序の検討として、高浸潤性を示す悪性腫瘍細胞株HT-1080(fibrosarcoma,Human),PA-1(teratocarcinoma of ovary,Human),SBC-3(small cell carcinoma of lung,Human),A-549(adeno carcinoma of lung,Human)を用いたMATRIGEL^<TM> invasion assayでclarithromycin(CAM),azithromycin(AZM)が浸潤抑制を示すことを見いだし、その機序の一つは、CAMでは悪性腫瘍細胞表面接着分子CD49cの発現抑制である事を確認した。しかし、AZMではCD49c発現に影響を及ぼさず他の因子を介した浸潤抑制効果であると考えられた。 AZMにおける作用機序については現在までの研究で、浸潤抑制の一つとして悪性腫瘍細胞よりのマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)産生抑制効果をゼラチンザイモグラフィーで確認している。 更に、AZMについては、その存在下で悪性腫瘍細胞を培養するとcontrolに比較して有意に細胞増殖が抑制される事が観察され(eye count)、3LL(adeno carcinoma of lung,Mouse)を用いたMTT assayにおいても有意に増殖抑制が認められた。この機序の解明を目的としてAZMのアポトーシス誘導能について細胞培養上清をヒストンとDNAに対する特異抗体を用いたELISA法で解析したところ、アポトーシス細胞数の増加を確認した。
|