研究概要 |
【背景および目的】成人呼吸促迫症候群(ARDS)の成立に肺胞マクロファージから産生される大量の一酸化窒素(NO)が関与することが知られる。オステオポンチン(OPN)は生理的にマクロファージ等から分泌される糖蛋白であり誘導型NO合成酵素(iNOS)を特異的に阻害する事が報告されている。本研究はOPNによる,ARDSの肺障害の制御を目的とした。本年度はマウスARDSモデルを作製し、iNOSとOPNの発現を解析することで、内因性OPNがiNOSの生理的調節因子として機能しているかについて検討を行った。【方法】1. lipopolysaccharide(LPS)を経気道的に投与しARDSモデルマウスを作成し、肺におけるiNOSとOPNの蛋白およびmRNAの発現を検討した。2. in vitroでマクロファージ系細胞株をLPSとIFNγで刺激し、iNOSの阻害剤であるS-isothiourea(S-Urea)の存在下と非存在下で経時的なiNOSとOPNのmRNAの発現を検討した。【結果】ARDSマウスの肺胞マクロファージ、および肺組織においてiNOSとOPNの蛋白およびmRNAの強い発現を認めた。一方、in vitroでのマウスマクロファージ系細胞株においてはLPSとIFNγでの刺激後iNOS mRNAが12hで最大の発現を認めたのに対して、OPN mRNAの発現増強はiNOSと比較して緩徐であり24hで強い発現を認めた。また、S-UreaでiNOSを阻害する事により、OPNの発現も著明に抑制された。【結論】ARDSにおいて肺胞マクロファージから産生される内因性OPNはiNOSに対して負の調節因子として生体内で機能している事が示唆された。しかしiNOSに比較してその発現が緩徐である事がARDSの発症に寄与している可能性が考えられた。
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