実験1:L-Arginine(Arg)により確実に一酸化窒素(NO)産生を増加させるべく、急性肺傷害モデルとしてまず、Endotoxin(EX)によるラット摘出環流肺モデルで基礎的データを取った。SPFラットを(G1)生食+高濃度Arg環流群、(G2)Ex+高濃度Arg環流群、(G3)Ex+低濃度Arg環流群の3群(各群n=6)に分け、Argの環流濃度を変えてNO産生量の調節を図った。環流液のLDH活性(肺傷害の評価)とNO_x濃度(NO産生量)、左肺のchemiluminescence(O_2産生量)を測定したところ、過剰なNO産生は急性肺傷害に対して有害に作用する事が推察された。 実験2:50時間100%酸素曝露ラット肺に対する2種類のNO合成酵素阻害剤、即ちTypeII NOSに対して選択性の高いL-N^6(1-iminoethyl)lysine(L-NIL)と選択性のないL-N^G-monomethyl arginine(L-NMMA)の影響を検討した。(G1)空気対照群、(G2)酸素対照群、(G3)酸素+L-NIL群、(G4)酸素+L-NMMA群の4群(各群n=10)に分け、肺湿乾重量比[W/D]と気管支肺胞洗浄液中総蛋白量[BALP](肺傷害の評価)、血中NO_x濃度(NO産生量)、肺組織におけるNOS(typeIIおよびIII)mRNAの発現について検討した。その結果、L-NMMAは高濃度酸素性肺傷害を憎悪させており、type III NOは防御的に作用する事が示唆された。また、type II NOは本肺傷害の発生機序の関与しないと推察された。
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