研究概要 |
運動開始直後と運動終了直後のphosphocreatine(PCr),酸素化へモグロビン/ミオグロビン(oxy-Hb/Mb),脱酸素化Hb/Mb(deoxy-Hb/Mb)の動態に注目し、健常人と慢性呼吸器疾患患者群において、この動態に差があるかどうか、加えて、酸素吸入によりこれら3つの時定数がどのように変化するかを検討した。対象は、健常人8人(年齢:61.4±4.9歳)、および慢性呼吸器疾患患者12人(年齢:68.6±4.9歳)。3分の反復掌握運動を施行。患者群では、同一日に室内気吸入と酸素吸入下の2回施行した。運動開始直後および回復期の筋肉エネルギー代謝の動態は、開始直後はPi/(PCr+Pi)の増加を、回復期はPCr/(PCr+Pi)の増加を指数関数で近似し、運動開始直後のPi/(PCr+Pi)の時定数{τPCr(on)}、PCr/(PCr+Pi)の運動終了直後の回復の時定数{τPCr(off)}を計算した。酸素化の動態は、運動開始から、oxy-Hb/Mb,deoxy-Hb/Mbがその変化量の半分に達するまでの時間を求め、T1/2oxy(on),T1/2deoxy(on)とした。回復期も同様にその変化量の半分に達した時間をT1/2oxy(off),T1/2deoxy(off)とした。このT1/2は、酸素吸入で筋肉エネルギー代謝が改善した患者群(酸素反応群)では、酸素吸入によりさらに早くなった。運動終了後の動態においては、PCrの回復が,患者群で遅い以外は両群間に有意な差を認めず、酸素吸入によっても一定の変化を認めなかった。患者群でoxy-Hb/Mbおよびdeoxy-Hb/MbのT1/2が小さい理由は、酸素や他の基質の供給制限が主な原因と推定される。酸素吸入により、筋肉エネルギー代謝が改善した患者では、酸素利用がもっとなされていると考えられた。したがって、患者の中には、酸素供給に問題があって、筋肉代謝が変化している群と、酸素以外の原因により筋肉代謝が変化している群があると推測される。
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