研究概要 |
HTLV-I関連脊髄症(HTLV-I associated myelopathy,HAM)では抗体依存性細胞介在性細胞障害(Antibody-Dependent Cell-mediated Cytotoxicity,ADCC)が低下している。本研究では,HAMにおいて低下した抗HTLV-I ADCC活性の増減に影響する因子の検討である。(1)抗HTLV-I ADCC活性に対するサイトカインの効果:あらかじめHAM患者5名及び健常成人5例の末梢血単核球(PBMC)をinterleukin-2(IL-2)(5U/ml)、interferon-α(IFN-α)(1000U/ml)及びinterferon-γ(IFN-γ)(1000U/ml)の存在下あるいは非存在下に16時間培養しその後このPBMCをEffectorとし、HTLV-1感染細胞株であるMT-2をTargetとして、検者の血清を用い標準的な6時間の51Cr放出試験(Effector/Target=100/1、血清希釈16倍)によるADCCアッセイを施行した。IL-2では健常成人全例でADCC活性は上昇したが、HAMでは3例で増加、2例で低下した。IFN-α及びIFN-γでは健常成人では全例でADCC活性は上昇したが、HAMでは4例で低下した。(2)ADCCエフェクター細胞及び抗体のcharacterization:HAM患者のADCC活性は抗CD16抗体添加によりほぼ完全に抑制された。またHAM患者の血清をprotein G処理した後にADCCアッセイに用いるとADCC活性は全くみられなかった。(3)アンチセンス法によるHTLV-I taxタンパクの発現抑制では抗HTLV-I ADCC活性に著変はみられなかった。(4)HAM患者においてNK細胞とT細胞のマーカーを合わせ持つサブセット(CD16+CD3+)のADCC活性は全体のl/3〜1/4程度である。NK-T細胞自体のHTLV-I感染細胞に対する細胞障害活性は低かった。
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