研究概要 |
我々は生活習慣病の代表格である高血圧の原因が、中枢神経機構の異常に基づくものではないかとの作業仮説のもとに、遺伝性高血圧ラット(spontaneously hypertensive rat,SHR)と正常血圧ラット(Normotensive Wistar Kyoto rat,WKY)を使って研究を行い、その成果を蓄積してきた。現代のストレス過多の社会状況の中にあって、この高血圧とストレスとの関係性について研究して、その成果をもとにストレスの解決法、高血圧の治療方法のヒントを得ることは社会の要請であると考え、本テーマのもとに研究を行った。SHRとWKYで血圧調節に関与する中枢ニューロンにどのような差異があるかを研究することは、ストレスの中枢ニューロンの差異の研究に先駆けて重要なことであった。その結果をまとめて#11に記載の論文として発表した。 他方、高血圧とストレスとの関係について、その中枢性機序を研究テーマとしている中で、最近、アペリン(apelin)と名付けられたペプチドが注目されている。このペプチドはラットなどの動物の血管平滑筋や脂肪細胞などに所在することが知られてきた。このペプチドには循環などへの生理効果が見いだされたことから、その作用を調査する必要性が生じた。そこで、循環反応に及ぼすアペリンの作用と、その作用の高血圧ラットと正常血圧ラットに及ぼす作用の違いについて調べている。アペリンには類似関連ペプチドとしてapelin9、apelin10、apelin11、apelin12、apelin13、apelin36などがあるが、とりわけapelin12の静脈注射は最も大きな血圧降下効果をもたらすことが分かった。また、apelin12のSHRとWKYへの静注投与による降圧効果は、SHRがWKYよりも有意に大きいことが分かった。このapelin12の静注投与がどのような機序で降圧効果をもたらすのか、また、apelin12と肥満との関係、高血圧発症とどのように関係するのか、ストレスと中枢性機構にどのように関係するのかについての調査を行う予定である。
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