研究代表者らはポリグルタミン配列をbaitとしてヒト胎児由来のcDNA libraryをyeast two hybrid法によりスクリーニングした。得られた配列から想定されるアミノ酸配列はいずれも極性アミノ酸に富むものであり、このことから、同じく極性アミノ酸に富むポリグルタミン配列とこれらの遺伝子産物が水素結合を介して結合するのでは想像した。次に、クローニングされたもののうち新規遺伝子PQBP-1について詳しく検討した。PQBP-1はN末端側にWWPドメインと呼ばれる蛋白結合モチーフとC末端側に極性アミノ酸に富む7および2アミノ酸の繰り返し配列を有していた。後者はalpha-helixおよびpolar zipper構造を取りうるもので、ポリグルタミン配列との結合ドメインと考えられた。さらに、PQBP-1はhuntingtinなどのトリプレット病遺伝子と転写因子のポリグルタミン配列の双方に結合すること、神経特異的転写因子Brn-2に対しては抑制性の転写補助因子として作用しうることを確認した。また、細胞内では核に多く存在し、脳内では小脳皮質に発現が多く認められることから、現在疾患との関連について調べを進めている。 このほかに関連した研究としてAlzheimer病原因遺伝子presenilin-1の機能としてc-Junの調節があること、ドパミン受容体D1A遺伝子の発現抑制にAP-2betaが関与していることなどを明らかにした。
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