末梢神経傍絞輪部局在性ガングリオシドの同定と実験的免疫性ニューロパチーの作成

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10670576
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 楠 進 東京大学, 医学部・附属病院, 講師 (90195438)
• キーワード: 末梢神経障害 / ギラン・バレー症候群 / ガングリオシド / 糖脂質 / 神経免疫学 / 脱髄

研究概要

末梢神経ミエリン、とくに傍絞輪部ミエリン、はGuillain-Barre症候群(GBS)における自己免疫機序の標的部位であり、同部に局在する抗原はGBSの標的分子となる可能性がある。GBSではとくにガングリオシドをはじめとする糖脂質がしばしば標的分子となることが知られている。われわれは既にガングリオシドGD1bがヒト末梢神経の傍絞輪部ミエリンに局在することを報告し、抗GD1b抗体陽性のGBSの臨床的特徴についても検討を加えてきた。本年度は急性期GBS患者血中の抗体をもちいてウサギ末梢神経を免疫染色し、あらたなミエリン抗原の検出を試みた。今回検討したのは75例のGBS急性期患者血清である。その結果5例の血中IgGでウサギ末梢神経ミエリンの強い染色がみられた。これら5例の血中IgGではウサギ脊髄の有意の免疫染色は認められず、末梢神経ミエリンに特異的な反応と考えられた。9種のガングリオシドやガラクトセレブロシド、SGPGなどのミエリン特異的糖脂質に対する抗体は5例の血中にはみられなかった。さらにメタノールやクロロフォルム・メタノール(C:M)1:1で処理した後の組織にも、上記のミエリンの染色が保たれていたことと合わせて、この抗体の標的抗原分子は糖脂質ではなくタンパク成分であると考えられ、現在抗原分子の同定をすすめている。またウサギ末梢神経をマウスに免疫して作成したいくつかのモノクローナル抗体の中に、ウサギ末梢神経のシュワン細胞を特異的に染色する抗体をみいだした。この抗体の反応する抗原についても現在検討中である。これらの抗原を同定しウサギに免疫することにより、脱髄による典型的なGBSの動物モデルの作成が期待され、GBSの病態解明および治療法の開発につながるものと考えられる。

研究成果

• [文献書誌] Hitoshi S, Kusunoki S, Tsuji S, Kanazawa I: "Anti-GD1b antibody-mediated trkC downregulation of dorsal root ganglia neurons"Neurosci Lett. 260. 157-160 (1999)
• [文献書誌] Mitsui Y, Kusunoki S, Hiruma S, et al.: "Sensori-motor polyneuropathy associated with chronic lymphocytic leukemia, IgM anti-..."Muscle Nerve. 22. 1461-1465 (1999)
• [文献書誌] Yako K,Kusunoki S,et al.: "Serum antibody against a peripheral nerve myelin ganglioside, LM1, in Guillain-..."J Neurol Sci. 168. 85-89 (1999)
• [文献書誌] Kusunoki S, Hitoshi S, Kaida K, et al.: "Monospecific anti-GD1b IgG is required to induce rabbit ataxic neuropathy"Ann Neurol. 45. 400-403 (1999)
• [文献書誌] Kusunoki S, Chiba A, Kanazawa I: "Anti-GQ1b IgG antibody is associated with ataxia as well as ophthalmoplegia"Muscle Nerve. 22. 1071-1074 (1999)
• [文献書誌] Kaida K, Kusunoki S, Kamakura K, et al.: "Guillain-Barre syndrome with antibody to a ganglioside, N-acetylgalactosaminyl GD1a"Brain. 123. 116-124 (2000)