アルツハイマー型神経病理変化形成の危険因子に関する研究

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10670579
• 研究機関: 東京医科歯科大学
• 研究代表者: 山田 正仁 東京医科歯科大学, 医学部, 講師 (80191336)
• 研究分担者: 水澤 英洋 東京医科歯科大学, 医学部, 教授 (30144091)
• キーワード: 脳老化 / アルツハイマー病 / 老人斑 / 神経原線維変化 / 脳アミロイドアンギオパチー / presenilin-1遺伝子 / α1-antichymotrypsin遺伝子 / butyrylcholinesterase遺伝子

研究概要

高齢者やアルツハイマー病患者の脳内でみられるアルツハイマー型神経病理変化の形成に関与する遺伝的危険因子を解明する目的で以下の研究を実施した。
(1) 症例の収集と神経病理学的検索:アルツハイマー病を含む60歳以上の200剖検例を対象とし、脳病変の病理学的検索を行った。通常の神経病理学的検索の他、アミロイドβ蛋白や異常リン酸化タウに対する抗体を用いた免疫組織化学的検索を行った。アルツハイマー型神経病理変化[老人斑(SP)、神経原線維変化(NFT)、脳アミロイドアンギオパチー(CAA)]について組織定量的な評価を行った。
(2) 遺伝的危険因子の検索:患者血液あるいは凍結脳からDNAを抽出後、presenilin-1(PS-1)遺伝子、α1-antichymotrypsin(ACT)遺伝子、butyrylcholinesterase(BChE)遺伝子の多型について検索した。
(3) アルツハイマー型神経病理変化((1))と遺伝子多型((2))の関連を検討した。その結果、以下の研究成果を得た。
(1) PS-1遺伝子多型とアルツハイマー型神経病理変化:PS-1遺伝子多型はアルツハイマー病の発症と関連せず、SPやNETとの関連も認めなかった。しかし、PS-1遺伝子多型はCAAの程度と相関を示した。
(2) ACT遺伝子多型とアルツハイマー型神経病理変化:ACT遺伝子多型はアルツハイマー病の発症と関連せず、SPやDNFTとの関連も認めなかった。しかし、ACT遺伝子多型はアルツハイマー病におけるCAAの程度と相関を示した。
(3) BChE遺伝子多型とアルツハイマー型神経病理変化:BChE遺伝子多型K variant(BCHE-K)はアルツハイマー病の発症とは関連しなかったが、SPやNETの程度と関連を示した。BCHE-KはCAAの程度と関連しなかった。

研究成果

• [文献書誌] Sodeyama N, et al.: "Thepresenilin 1 intronic polymorphism is not associated with Alzheimer Type neuropathological changes or sporadic Alzheimer's disease." J Neurol Neurosurg Psychiatry. 64. 548-551 (1998)
• [文献書誌] Yamada M, et al.: "Aging of the human limbic system : observations of the centenarian brains and analysis of genetic risk factors for the senile changes" Neuropathology. 18. 228-234 (1998)
• [文献書誌] Yamada M, et al.: "Association of α1-antichymotrypsin polymorphism with cerebral amyloid angiopathy" Ann Neurol. 44. 129-131 (1998)
• [文献書誌] Yamada M, et al.: "Butyrylcholinesterase K variant and cerebral amyloid angiopathy" Stroke. 29. 2488-2490 (1998)
• [文献書誌] Sodeyama N, et al.: "Lack of genetic associations of α1-antichymotrypsin polymorphism with Alzheimer type neuropathological changes or sporadic Alzheimer's disease" Dement Geriat Cog Disord. (印刷中). (1999)