研究概要 |
セルロプラスミン欠損症(以下、本疾患という)は新たな遺伝性鉄代謝異常症で、無セルロプラスミン血症と脳、肝臓をはじめとする全身の諸臓器への鉄の過剰蓄積を来す。我々は既に本疾患の原因が、セルロプラスミンの遺伝子異常であることを明らかにして来た。 今回は、本疾患の遺伝子頻度を算定するために、静岡県中西部の健康診断を受診した男女約72万人から無作為抽出した4,990名について遺伝子変異を検討した。方法は、血漿セルロプラスミン値でスクリーニングし、19.3mg/dl未満の41名について、各エキソン毎に PCR-SSCPを行い、サブクローニングした後塩基配列を決定した。その結果、1名のホモ接合体と5名のヘテロ接合体を同定した。遺伝子変異は、浜松型1名、長崎型3名と新たにエキソン14の1 bp deletion(アミノ酸809,G:nt2482)を持つ2名を発見した。これよりGene frequencyは、70x10^<-5>と算定された。また、近親婚がない場合は、ホモ接合体の遺伝子頻度は約200万人に1人、ヘテロ接合体は約30万人に1人であることがわかった。 また、富山県で発見されたパーキンソニズムを主徴とした新たな本疾患の一家系において、エキソン11の1 bpのdeletion(G:nt 2068)の遺伝子変異(truncation)を同定した。 セルロプラスミンはそのフェロオキシダーゼ活性により強力な抗脂質過酸化作用を有しており、鉄やフェリチンは脂質過酸化を促進することが分かっている。すでに本疾患患者の血漿では脂質過酸化の亢進を認めており、今回は髄液で検討した。その結果、髄液の鉄濃度はホモ接合体で3-9倍に増加しており、神経症状の程度と平行している傾向が認められた。更に、鉄濃度の増加は過酸化脂質の増加と正の相関を示した。また、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)の増加、中でもMnSODの著明な増加をホモ接合体で認めた。
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